2012年4月23日月曜日

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

レンタルショップでしばらく氣にはなっていたのだが、嫁さんが借りて来たので週末に観た。原作は「日の名残り」でイギリスの文学賞であるブッカー賞を取ったカズオ・イシグロの2005年の小説。映画はキャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイが主演を務め、キャリー・マリガンが演じるキャシーの回想と言う形で物語は展開する。イギリスの片田舎の寄宿学校ヘールシャムで子供時代から一緒に育ったキャシー、ルース、トミー3人のドラマ。



 切ない。この映画を一言で表現するとしたらこれに尽きる。題材は一応SFなのだが、物語の設定が過去なので、映画にはSFらしさはほぼ皆無。冒頭で説明される物語の時代背景設定もサラッとし過ぎていて、その上、物語は天氣の悪いイギリスで続くので、下手すると途中まで題材がSFである事を忘れてしまうぐらいだ。抑制された絵と淡々と語られる物語の中で一つ一つの事件が胸を締め付ける。


ここから先は少しネタばれ。分かる人には予告編で充分にネタばれしている感があるが、一応警告。

 観終えた時にとにかく救いの無い切なさに包まれたのだが、同時にデジャ・ヴュ感もあった。この物語の骨子、どこかで観たような。それで思い出したのが、2005年のマイケル・ベイの映画、「アイランド」。


 全く異なる作品のように見えるが、基本的には同じ話である。方や純文学で登場人物の心理描写と逆らえない運命を抑制したタッチで描く。方やハリウッドの大資金でアクションと盛大な爆発シーンを交えて、主人公達は運命に逆らいハッピーエンドに持ち込む。どちらが面白いかは個人の好みがわかれる所かもしれない。個人的には「わたしを離さないで」が好み。


家にあるカズオ・イシグロの他の未読小説を読むべきかは悩む所ではあるが




2012年4月17日火曜日

台湾、食の旅/村子口

親友からの台北、食ガイドの中に記載のあった店で強烈だったのがこの村子口。コメントに、「本物のハードコア台湾料理が食べたかったらここ。保証するけど行ったら非台湾人は君らだけだから」、とあった。場所は忠孝敦化駅の近く。今回、泊まっていたホテルからも散歩にちょうど良い距離だった。友人のコメントに、「とにかく混んでいるから12時前に行くように」、とあり、11時半前の開店直後に辿り着いた。

 普通のオフィス街の中にあるにしてはなかなか独特の空氣を醸し出しているが、我々が入ってすぐに地元のサラリーマンやらその他大勢の人が来て、店内はすぐに混みだした。我々は壁際の2人用のテーブルの隣にベビーカーを寄せていたが、円卓は一氣に相席状態。子供がちょうど昼寝を始めたので、その幸運を噛み締めながら味わった。




確かに日本人は我々だけで、メニューは中国語のみ。紙に書かれた漢字メニューに数字を書き込んでお店の人に渡す他、自分で取りに行く。



こちらのブログに詳しく書いてあるが、自分で食材をピックアップしてお店の人に頼むと刻んで料理してくれる。嫁さんがさっと取りに行って持ってかえってきたのが中央の内臓系の料理である。水餃子はお店の人のお薦めで6個を注文したが、あまりの美味しさに感激して6個追加した。紅燒牛肉麵、麺は普通に美味しいなと思っていたが、スープを飲んだら吹き飛ばされる美味さ。びっくりした。その他にも我々のテーブルの近くに巨大な鍋があり、


人々が各々並びながら自由にスープと中に入っているトウモロコシを取っていた。こちらは周りの人々の物真似で我々もおかわりしながら味わった。他にも試したい料理は幾つかあったのだが、昼間はやっていない料理もあったようで今回はこの程度。こちらに他の料理も載っている(ジャージャー麺ももちろん食べた)。

今回びっくりしたのが、実は嫁さんがこの店に来るのは二度目だったと言う事実。台湾は何度も出張で過去に訪れており、取引先と食事をする事も多かったそうなのだが、一度、現場レベルの若い台湾人に連れられて来た事があったそうな。とても美味しかったので、もう一度行きたいと思いつつ、場所も名前も分らなかった所に今回、偶然、再訪出来た次第。確かに普通に海外から来た取引先を接待するのに使う店ではないが、親しくなった後に、地元の人達が行列して食べるような美味しい店である。ここももう一度行きたかったのだが、時間の都合で叶わなかった。餃子を追加して腹一杯、それでいて値段は500元ちょっと程度だったと記憶する。安い、さすが地元の人達が昼飯を食べに来るお店。子供が起きてきた事もあり、美味しさの余韻に浸りつつお店を後にした。


そのままフルーツバーに行ってデザート


そこで食べた釈迦頭(バンレイシ)がまた美味しくて・・・しかし腹一杯であまり食べられず、主に子供に食べられました(写真左手前)

<写真>

2012年4月16日月曜日

台湾、食の旅/大隱酒食

台湾に旅行するに当たり、親友の台湾人は不在だったのだが、「子連れで行ける美味しいお店を教えて欲しい」、と尋ねたら写真付の論文のような案内文が届いた。お茶、夜市、そして料理と詳細に渡っている。そんな中から行ったお店を一つ紹介。

大隱酒食。ネットで検索すると住所も含めて色々と紹介されているが、我々は夕食を食べに行った。夕食と言っても子供が早く寝るので、夜遅くまで散策する訳にもいかず開店早々、17時半に行った。お店の外観はこんな感じ。




日本語メニューあり。言葉の通じ具合は何となくと言う感じ。親友のコメントは、「何を注文しても外す事は無いが、ラードライスは必須」。素直に従った。ラードライスも美味しかったが私の脳を吹き飛ばしたのは牡蠣の炒め物。私の写真だとピンボケでイメージが掴み難いかもしれないが、こちらで奇麗に紹介されている。



ちなみに私の写真の手前に写っているのが牡蠣で、その隣がイカの生姜炒め。お店の人にお勧めを尋ねた所、焼き魚と牡蠣がお勧めであった。とは言え日本から来て焼き魚を食べなくても良いだろうとイカを注文。限り無く納得されない表情だったが、他の料理がかなり鮮明な味わいの中、さっぱりしており、箸が進んだ。

この日は朝、台北市に入り、ホテルにチェックインする前に早めのランチにと歩いてすぐの鼎泰豊(ディンタイフォン)でも食事。日本には無いメニューが盛りだくさんでとても美味しかったのだが、大隱酒食で夕食を楽しんでいたら記憶がかすんでしまった。料金は1、035元ぐらいだったか、日本円で2,800円ぐらい。お酒無しで大人二名、子供一人だと実にリーズナブル。また行きたい店である。


注文時にオーダーストップをかけられましたけど

鼎泰豊(ディンタイフォン)と大隱酒食、それぞれ店員に「そんなに食べられないから」と幾つかの品は泣く泣く諦めました

2012年4月11日水曜日

台湾

それは2週間前の金曜日午後に突然やって来た。マイレージで申し込みをし、キャンセル待ちをしていたチケットが取れたとの連絡が嫁さんからあったのである。出発日は翌週。子供が2歳になって国際便のチケット代がかかる前にもう一度、海外に行こうと計画はしていたがもう少し先の話だと思っていた。そう言えば第二希望でそんな日程を考えていた事を思い出した。行き先は台湾。

難点は休暇を取る事だが、会社で空氣を読まない事については定評のある私、タイミングを見計らって上司に相談、了解を得た。ネットが繋がらない場所に行く訳では無いし、何とかなるだろう。台湾、私にとっては10数年ぶりのアジア、そして初めての国だが、嫁さんは出張で10回近く行っている。大ベテランの嫁さんにホテルの手配などをお願いする。

台湾で何がしたいか。家族で行くからには美味しいものを食べる事が第一。そして私の場合、親友兼師匠の国である。本場の国で妻子が寝た後か起きる前に濃い時間を過ごす事が最大の楽しみだ。ワクワクしながら師匠に遂に台湾行がかなったとのメールを打つ。レスは翌々日に届いた。「実は用事があって家族全員、アメリカに戻って来ている。5月にはまた台湾に行くのだけど」。


何だよ!

旅のフォーカスは食に決定した瞬間でした

2012年4月2日月曜日

デニーロ フェア


意図していた訳では無いのだがこちらの方の掲示板のコメントに触発されて久しぶりに「Midnight Run」を借りて観た後、嫁さんが「Wag the Dog」を借りてきて観賞。期せずして1988年の作品と1997年のロバート・デニーロの作品を観る事になった。




「ミッドナイトラン」。現在、続編の製作が噂されている賞金稼ぎを描いた1988年の傑作。映画館で観た記憶があるので当時、中学生か高校生だったに違いない。元警官で賞金稼ぎのデニーロが、会計士でギャングの金を慈善団体に寄付してしまったグローディンをNYで捕まえてLAまで連れて行く物語。典型的なバディー・ムービーである。当時はピンと来なかったが、NY、ピッツバーグ、シカゴ、ラスベガス、LAの漠然とした位置関係が分かると彼等の旅ぶりが何となく伝わって来る。

登場人物の大半がヘビー・スモーカー、電話は公衆電話、飛行機のイヤホンは耳にぶら下げる聴診器型、カメラはポラロイドと言う辺りにとことん80年代を感じる。物語が全体的に能天氣な明るい空氣に包まれているのも80年代の映画の特徴か。当時のデニーロと今の自分があまり歳が変わらないと言う事実に茫然。





「ウワサの真相-ワグ・ザ・ドッグ」。大統領選挙を2週間後に控えた所に現職の大統領にセックス・スキャンダルが。もみ消しのプロとして雇われたデニーロがハリウッドのプロデューサー(ダスティン・ホフマン)と組んで世論操作の為に戦争をでっち上げる物語。今、観るとどこかで聞いた事があるような話だと思うが、驚くべきはクリントン大統領のモニカ・ルインスキー事件の前に作られていると言う事実。上映時間97分と徹底的に無駄を省いた構成とブラックユーモアで退屈させない。テレビニュースが世論を形成する空氣、同時多発テロの後のイラク侵攻前のアメリカで実感した事を思い出す。大ヒットするタイプの映画では無いが、大人の鑑賞に耐えうる作品。私の中ではデニーロとホフマンの共演は2004年の「ミート・ザ・ペアレンツ2(Meet the Parents 2)」、だったのでここで共演していたのはプチ発見。

特にデニーロを意識している訳では無いのだが、クリスマスから年末年始にかけて「ゴッドファーザー」三部作を観て以来、氣が付いたら結構まとめて観ている氣がする(「ディア・ハンター」も観たし)。先日、書いたタクシードライバーと比較しても70年代、80年代、90年代とそれぞれの時代の空氣が反映されているなと思う。


 今のネット時代では逆に考えられない面白み


 「ミッドナイトラン」の設定も「ウワサの真相」も今の時代背景では物語が成立しないだろうと思った次第です